本記事の要約
Apple Intelligence に対応した新型 iPad mini(A17 Pro)。この iPad mini は前モデルと比較して価格面ではどうか? 購入のポイントは? そして 2025年に利用可能と噂される Apple Intelligence の対応チップ A17 Pro 性能は? などを詳しくチェックしていきます。また、実際に実機を約1ヶ月+α 程使用したこの機種の良い点やダメな点をピックアップしていきます。
2024年10月23日に 発売された iPad mini(A17 Pro) 。
iPhone と違い iPad の発表なので少々話題性に欠けていたかも知れませんが、この小さな iPad は 2021年の前モデルの発売から3年を経て待ち焦がれた方も多かったのではないでしょうか。筆者も例に漏れず待ち望んでいた一人で、すぐに注文し発売日に入手することが出来ました。
さてこの iPad mini(A17 Pro) 、機種名からもおわかりのとおり、プロセッサには A17 Pro が採用されています。Apple では 本機の発売日に遡ること1ヶ月前の 9月の発表で iPhone 16 Pro で A18 Pro を投入していたので 後発の iPad mini にも A18 Pro あるいは先発の iPad Air (M2) 同様に M2 など Mチップのいずれかを期待していましたが、結果として A17 Pro が採用されました。最新チップであることは間違いないのですが、この iPad mini に採用された A17Pro は iPhone 15 Pro で採用しているもの(GPUコアx6)より若干性能を落としたもの(GPUコアx5)となっているので長らく待ち望んでいた身としては若干のモヤモヤ感は否めません。もっともプロセッサの採用基準云々はともかく、iPad mini(A17 Pro) は正式に Apple Intelligence に対応する機種として登場しているので今後活躍してくれることを期待しましょう。
あれから1か月あまり。
今回はそんな iPad mini(A17 Pro) について使用感をお伝えしていきます。
外観
iPad mini(A17 Pro)ブルー
iPad mini(第6世代) パープル
まずは外観です。今回の機体カラーはブルーをチョイス。カラーリングを除きシルエットやディメンションは前モデルの iPad mini 6 と見分けがつきません。今回ご覧いただいている機種はセルラーモデルなので裏面の上下にライン(アンテナ線)が入っていますが、これも前モデルも同様のデザインとなっています。
※iPad mini(6th) と外観上見分けるポイントとしては SIMスロットの有無、背面の iPad ロゴが iPad mini と mini の文字列が追加されている点でしょうか。
カラーリングは スペースグレイ、ブルー、パープル、スターライトの全4色。前モデルからはピンクが消え、ブルーが追加されました。前モデルに比べ色味がやや淡くなった印象です。容量ラインナップは 128GB、256GB、512GB の 3つで、前モデルの容量構成が 64GB、256GBだったことを考えると全体的に容量が増え選びやすくなったことになります。
販売価格
iPad mini(A17 Pro)のApple公式の販売価格は 2024年12月時点で容量の一番小さい Wi-Fiモデル/128GB版 が 78,800円(税込み)となっています。前モデルの iPad mini(第6世代)廉価グレードの Wi-Fiモデル/64GB版 が 84,800円(税込み)だったので数字だけを見るとストレージが倍増して値下げとなっています。「数字だけを見ると」と言ったのは、前モデル iPad mini(第6世代)の場合は為替レートの影響で 2024年5月に 78,800円 から 84,800円(いずれも税込み)へと値上げとなっているので、128GBモデルで考えてみると実質的には「価格据え置きでストレージ倍増」というのが正しいでしょう。iPad mini はスマホと併用する方が多く、サブ機としてのイメージが高いため需要的には容量が倍増され価格据え置きでコスパの良い 128GB モデルが伸びてくるかと予想しています。
iPad mini(A17 Pro)Apple 公式サイトの販売価格(2024年12月現在)
ストレージ | Wi-Fi | Cellular |
---|---|---|
128GB | 78,800円(税込) | 104,800円(税込) |
256GB | 94,800円(税込) | 120,800円(税込) |
512GB | 130,800円(税込) | 156,800円(税込) |
上記を見ると、同じ A17Pro を搭載した iPhone 15 Pro MAX 256GB の発売日価格で 189,800円だったので Apple Intelligence 対応端末が安価に購入できるとも言えます。
新旧比較
主な前モデルと違う点は下記のとおりです。
製品 | iPad mini(A17 Pro) | iPad mini(第6世代) |
---|---|---|
チップ | A17Pro | A15 |
AI対応 | Apple Intelligence対応 | – |
通信 | Wi-Fi 6E 対応 セルラー:eSIM Bluetooth 5.3 |
Wi-Fi 6 対応 セルラー:eSIM/nanoSIM Bluetooth 5.0 |
メモリ | 8GB(独自調査による) | 4GB(独自調査による) |
Apple Pencil | Apple Pencil Proに対応 Apple Pencil(USB-C)に対応 |
Apple Pencil(第2世代)に対応 Apple Pencil(USB-C)に対応 |
容量 | 128GB、256GB、512GB | 64GB、256GB |
カラー | スペースグレイ、ブルー、 パープル、スターライト |
スペースグレイ、ピンク、 パープル、スターライト |
なお、iPad mini(A17 Pro)の詳しい仕様は メーカーホームページ でご確認ください。また本章では便宜上 iPad mini(第6世代)を「第6世代」、iPad mini(A17 Pro)を「第7世代」と呼称して話を進めていくことにします。
新旧比較で大きな違いは Apple Intelligence対応 かどうかです。2024年12月現在、日本語版が登場していないこともありあまり有用ではありませんが、第7世代は Apple Intelligence に対応しており、その恩恵として 8GB RAM を実装しているのでアプリの複数起動でも余裕が生まれたのも嬉しいポイントです。第6世代は Apple Intelligence 非対応なので今後日本語版の登場で 第7世代の優位性が際立つようになるでしょう。
その他の動作について、他のブログや動画サイトではチップ性能差が云々という話を耳にしますが、筆者的には新旧比較でRAM容量の違いこそあるもののよほどヘビーな使い方をしない限りは性能に大差ないと考えています。もし iPad でそれなりに重い作業をしたい場合は価格の近い Air、あるいは価格が上がっても性能がダントツの Mチップ搭載 iPad を利用すればよいためです。
性能面以外の部分、装備面では良し悪しが際立つように感じます。良い面を見ると、第7世代では価格据え置きながらも容量倍増でラインナップも増えて自身の環境にあった製品を選びやすくなりました。 その反面、第7世代では Apple Pencil(第2世代)が使用できません。Apple Pencil Pro はそれなりに高額(21,800円)な製品なので既に Apple Pencil(第2世代)を所持しているユーザーは買い替え必須となってしまいます。Pencil とセットで利用しているユーザーにとっては痛い出費でしょう。通信環境では Wi-Fi 6/6e や Bluetooth の違いについては個人レベルのユースでは誤差の範疇でしかありませんが、セルラーモデルについては第7世代で nanoSIM スロットを切り捨てて eSIM のみの運用なので、別端末の SIM を任意に差し替えて使うことができないというデメリットが発生しています。
インプレッション
今回購入したのは iPad mini(A17 Pro)128GB セルラーモデル 104,800円(税込)となります。セルラーモデルと Wi-Fi モデルとの仕様の違いは、「モバイル通信対応」「GPS搭載」の 2点のみです。普段から iPhone を利用しているユーザーであればネット環境や GPS は iPhoneからの自動テザリングと位置情報の共有が可能なので、性能が同じで2万円以上高いセルラーモデルではなく Wi-Fi モデルでも困ることはなさそうです。
とは言え、iPhone からのインターネット接続共有は接続開始まで数秒間のタイムラグがありますし、iPhone側のバッテリーの消費もそれなりにあります。Wi-Fi版のメリットは通信費用がかからない点ですが、昨今の通信費の低価格化で月額負担は大きいものではありません。いずれにせよ Wi-Fi 環境下での利用と外出先での利用とで比重を見てどちらを選ぶか検討してもよいでしょう。
もっとも、Plus系の大型 iPhone よりも大画面なので、電話(通話)よりネット中心の作業が多い場合は iPhone の代わりに運用したり、筆者のように外出先で iPad mini を単独利用する機会が多い方はセルラーモデルを選ぶと快適です。セルラーモデルは販売価格が高いので Wi-Fi モデルとの差額で最新の Apple Pencil Pro(21,800円)が買えてしまいます。対費用効果では悩ましいところですね……。
使用感
レビューするのは 128GB セルラーモデルで回線は楽天モバイルを使用しています。回線の通信状況については場所や時間帯によって良し悪しがあるので深くは言及しませんが、楽天モバイルに関して言えば定額料金で場所を問わず容量も気にせず使えるので便利です。
筆者の主な用途はシステム手帳代わり、次点で iPad版 Adobe Illustrator(PC/Mac の Adobe Creative Cloud サブスクリプション契約で利用可能です。) の利用、次にキンドルの閲覧と続きます。もちろんゲームや動画アプリも入れていますが、それらの iPad での稼働率はそれほど高いものではありません。
動作についてはもっさり感とは無縁でヌルヌル動きます。複数の動作の重そうなアプリを起動させてみましたが動きがカクついたりアプリが落ちるようなことはありませんでした。これはメモリ容量が大きいことの恩恵でしょう。
一定期間使ってみた所感
とにかく軽いです。持ち運びで苦になりませんし邪魔になりません。iPhone 15 Pro 以上のモデルを既にお持ちで iPad に Apple Intelligence 対応を求めないのであれば第6世代からの買い替えは見送りでもいいように感じますが、それ以外の方、例えば iPad mini 第5世代 からの買い替えや新規で小型のタブレットを求めている方には最適な製品です。プライベートでゲームや映画を楽しむ端末としても性能で足を引っ張るようなこともありませんし、ビジネスでペンと併せて持ち歩けば手帳代わりにもなります。リモート接続などを活用すれば業務 PC を持ち歩かずに済むシーンもあるように感じました。
iPad mini が新しい端末ということもありますが、iPhone およびこれまで使っていた iPad(第9世代)セルラー版 の利用頻度が下がったように思います。特に iPad は SIM を抜いたこともありますが使ってすらいません。このまま初期化して家族に譲渡することになるでしょう。そして iPhone で出来ることは電話以外は大抵こなしますし、iPhone 使っていたアプリを入れたことと相まって外出先でも iPhone より広い iPad mini の画面で操作することが多くなりました。
困ったことと言えば SIM の取り扱いです。筆者の利用している楽天モバイルは eSIM→eSIM および nanoSIM→eSIM は手数料無料でもその逆(eSIM→nanoSIM)は都度3,000円という実質的な壁があるため端末によって抜き差ししながら使えなくなることを意味しています。これまではあちこちの端末で 1つの SIM を使いまわしてたのですが、悩んだ末に物理SIM(nanoSIM)から eSIM へ切り替えた次第です。切り替えは手順がわかりにくくサポートに問い合わせたりと手間がかかりました。やはり SIMトレーの切り捨ては早すぎたと思います。
そしてもう一つ、顔認証が無いので不便です。起動の際、ロック解除のたびに指紋認証を要求してくるので、向きによっては持ち直しを強いられます。持ち直しや回転が面倒なので最終的に左右の親指・人差し指他 を登録しましたが、iPhone のような顔認証ロック解除の恩恵を得られないのは残念です。
第6世代で不評だったゼリースクロール問題について、筆者は前モデルを使っていなかったので比較はできませんが、挙動に現れることはありませんでした。60Hz なので 120Hz に慣れた方は残像が気になるかもしれませんが、ウニウニ~とした波打ちにはならず概ねスムーズにスクロールしています。この 120Hz に対応していないことを嘆くレビュアー諸氏も多いようですが、120Hzにすると価格上昇必須なので 60Hz の採用は妥当といったところです。
A17 Pro って性能はどうなの?
おそらく多くの方が気になるチップ(CPU)性能ですが、体感では AI関連を除くと処理速度は大体 M1 同等と言われています。詳細なスペック比較は専門のブログなどで語られているので割愛しますが、下記に A17 Pro と M1 との比較表を載せておきます。
※この表は あくまで筆者目線・独自調査であり、公式発表に基づくものではない点にご留意ください。
chip | A17 Pro | M1 |
---|---|---|
コア数 | 6コア | 8コア |
NPU | 16コア@35TOPS | 16コア@11TOPS |
GPU | 24unit-768shader | 128unit-1024shader |
VRAM | 6GB | 8GB |
メモリ | LPDDR5 6400 | LPDDR4X 4266 |
キャッシュ | L2:20MB L3:24MB | L2:16MB L3:– |
TDP | 11W | 18W |
プロセス | 3nm | 5nm |
それぞれに用途や向いている機種が違うため単純にどっちが良いか比較はできませんが、数値で見るとシングル性能ではA17Pro、マルチではM1。グラフィック性能では M1 にアドバンテージがあり、AI性能では A17Pro が強いようです。こうして数値で見ると A17Pro は消費電力も少なく高性能なのがわかります。最新の M4 などには及びませんが、高い処理性能を備えていると言えるでしょう。
評価できるポイントと惜しいポイント
ここは評価できる①:メモリ増量
公式には非公開ですが、ベンチマークアプリなどで計測したところメインメモリが 8GBとなっています。これは Apple Intelligence で 必要なメモリ容量を確保するためですが、メモリは多いに越したことはありません。メモリが多いと起動中のアプリが突然落ちることもなくなりますし、Apple Intelligence 利用の有無にかかわらず他のアプリが快適に動作するといった恩恵があります。
ここは評価できる②:価格据え置き
物価高や為替レートの影響もあるとは思いますが、ある有名メディアのアンケートでは最近の Apple製品は手が出しにくい価格だと感じているユーザーが多いという結果が出ていました。最近はドル円の為替レートが 150円~160円前後で推移しているわけですが、前モデルと比較してストレージ容量倍増なのに前モデル同様の価格で販売されている点は評価できます。本体価格は上がってくるだろうと予想していただけに嬉しい誤算です。
ここは評価できる③:USB-C 端子による汎用性
前モデルで Lightning から USB-C へと刷新されたわけですが、このモデルもそれを踏襲しています。最近は PC だけでなく液晶ディスプレイや周辺機器なども USB-C に統一されるようになりました。このおかげで充電には困らなくなり、専用の周辺機器や変換アダプターを購入する必要もなくなりお財布に優しい仕様に。特に USB-C による液晶ディスプレイ接続では画面ミラーリング(HDCP映像を除く)しながら充電できるようになったので、画面が小さすぎて不便と感じたことはありません。
ここが惜しい①:またまた Pencil 買い替えです
案の定というか既定路線ですが、Apple Pencil Pro 対応のため、Apple Pencil(第2世代)の使用が不可能に。過去を振り返ると iPad mini(第5世代)では Apple Pencil(第1世代)が利用可能になり、iPad mini(第6世代)では Apple Pencil(第1世代)を利用不可として Apple Pencil(第2世代)に対応させ、iPad mini(A17Pro)では Apple Pencil(第2世代)を利用不可として Apple Pencil Pro に対応させる。といった世代交代が行われています。他の iPad 上位モデルに牽引された形にはなりますが、iPad mini に限定して言えばその都度 Pencil の買い替えが発生してしまうのはどうなの?となります。Apple Pencil USB-C という選択肢もあることにはあるのですが、同Pro と比較すると機能限定版となります。ペンシルに関して言えば最近はサードパーティー製品の性能がかなり向上してきたこともあって文字を書くだけならそれらでも良いかもしれません。
ここが惜しい②:SIMトレーが無い(セルラーモデル)
セルラーモデルのみのお話ですが、残念なことに nano-SIM が使えなくなり eSIM のみの対応となりました。ご存じのとおり eSIM は物質的なカードがなくデータのみなので入れ替えは出来ません。端末にデータを送り認証を経て利用可能にするため、他の端末で回線を使いたい時には入れ替えではなく通信会社に申請し eSIM の再取得になります。eSIM再発行はもちろん、eSIMとnanoSIM との切り替えで各々手数料が発生することもあって事実上差し替え(入れ替え)は不可能ということに。筆者は今回この点について承知で購入していますが、筆者のように複数端末で 1つの SIMカードを共有している場合は致命的デメリットであるとも言えます。SNS や YouTube で他のレビュアーさんも指摘していたように筐体構造的には先代の iPad mini (6th) で実現できていたので残しておいて欲しかった仕様ですね。
ここが惜しい③:Touch ID のみ、顔認証が無い
前々から思っていたことですが、顔認証が無いと不便です。iPhone を利用しているユーザーなら共感していただけると思いますが、起動した際に「Touch ID」と表示され、ロック解除のためには指紋認証あるいはパスコードを入力する必要があります。これが毎回なので煩わしいと感じています。iPhone のような小さな端末でも実装している機能なので技術的には対応可能でしょう。次モデルではぜひ対応して欲しい機能です。
iPad mini(A17Pro)はどんな人に向いているのか
iPadシリーズは iPad Pro、iPad Air、iPad mini、iPad(第10世代)とラインナップが豊富です。どの機種にしても OS自体は同じ iPadOS(バージョンは個々のアップグレード状況次第ですが)なので操作に迷うことはありません。iPad mini(A17Pro)はどんな人に向いているのでしょうか。
こんな人におすすめ(筆者主観)
- 【ビジネス】営業で PC のサブ機として
- 【ビジネス】配送ドライバー、倉庫などでの在庫管理、入出荷管理、飲食店のホールなどの業務端末
- 【ホームユース】プライベートでの映画やドラマなどの視聴、iPhone 代わりに、ゲーム用端末として
持ち歩くことを前提としているユーザーには最適なサイズです。上記でも言及していますが、配送ドライバーやホールスタッフの注文処理ならスマホでは小さすぎ、10インチクラスでは大きすぎなのでこのサイズ感がちょうど良いでしょう。他方、デザイナーや対面営業などで活用するなら本機は小さすぎるので向いていません。iPad Pro や Air などの 13インチ級の大型機をおすすめします。ファミリーユースや子供の学習用(という名のゲームや動画視聴用)であれば安価に購入できる iPad(第10世代)の Wi-Fi モデルを、将来において Apple Intelligence が使いたいなら iPad Air をお勧めします。本機 iPad mini (A17Pro) はプライベートユースやサブ機として携帯性を重視しながらも Apple Intelligence 対応端末が欲しいユーザーに最適なモデルと言えます。