2019年現在、スマホやタブレットは皆さんの生活の中に溶け込んでおり珍しいものではなくなっています。ある調査によるとスマホは国民一人が3台以上、タブレットは一台以上を所有している計算らしいです。実数はともかく、スマホやタブレットの登場以来、現在までに数億台のそれが流通している(いた)というのはすごいことですよね。
さて、そんなスマホ・タブレットの中で今回はタブレットに注目していくことにしましょう。タブレットは概ね8インチ~10インチクラスまでが主流ですが、最近はスマホの大型化に伴い個人ではスマホで事足りることが多く、タブレットはどちらかというとプライベート以外の環境、学校教育や公共的な利用で需要があります。特に公共施設や飲食店(居酒屋や寿司店に多い)の注文画面や会社・役所・公共施設の受付業務などで据え置きされているのでお馴染みの方も多いのではないでしょうか。
……ですが、思ったことはありませんか。
公共の利用を想定しているにも関わらず「画面が小さい」と。
若者ならともかく、公共利用では操作方法が書いてあっても文字が小さいため読めない年配の方が画面を前に四苦八苦しているのを見かけることも少なくありません。
2019年夏、そんな据え置き型タブレットに一石を投じる製品がドイツ生まれの中国企業 Faytech 社から登場しました。ラインナップは 8インチから始まり10.1型、13.3型、15型、15.6型、17型、19型、21.5型。いずれもタブレットには珍しい組み込み型(据え置き型)で現在は日本市場向けに技適を取得済とのことですが、今回は実機を触る機会を得たのでご紹介します。
ファーストインプレッション
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ファーストインプレッションはやはり13.3型なので大きいといった印象でした。普段見慣れているiPad9.7インチと比べてもそのサイズの巨大さがわかるかと思います。もちろんラインナップには8インチ~21.5インチの製品があるのでさらに巨大なものあるいは小さな製品を求めることも可能です。サイズ以外ではあくまでタブレットとして見てしまうと2019年製としてはかなりベゼルが太いので古臭く野暮ったい印象を与えてしまいます。しかし本機はバッテリーレスの組み込み型(据え置き型)なので、什器組み込みであればあまり気になることはありません。
最大の特徴といえば一般的なタブレットにはない豊富な端子類でしょう。これは拡張性を重視する据え置き端末としては非常に嬉しいポイントですね。ただ、豊富な拡張端子類の搭載に対して、一般的なデジタル機器にあって本機に無いものがボタン類です。電源ボタンも音量ボタンもありません。最初に触った印象ではどうやって電源を入れるんだろうかと考え込んでしまいました。このあたりは据え置き(組み込み)端末なのを意識せざるを得ません。一方でカメラ・マイクロフォンなどが非搭載という点も見逃せません。公共用途ではほとんど利用しない機能なのでいい意味で思い切りが良い作りになっています(カメラやマイクロフォンは各端子経由で外部接続可能です)。そして設置に便利なVESA対応という点も見逃せません。
また、防塵防水も優秀なようで裏面のフレーム接合部を見てみるとシーリングされているのがわかります。本機はフロント部(端子部分を除く画面まわり)がIP65相当なので、什器などに組み込んでしまえば水気のある場所や粉塵の舞うエリアでの利用も可能なのでしょう。背面パネル側はIP40なので粉塵や飛沫の多い環境で利用する場合は組み込みの際にシーリング対応が必要となります。
外観
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スペック
製品名称 | 13.3型 タッチPC |
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CPU&チップ | Allwinner V40 4コア Cortex A7 |
GPU | ARM Mali400 Mp2 Complies with OpenGL ES 2.0/1.1 |
Audio | Integrated Hi-FL 100db Auccio Codec Dual analog mic/2x6W Amplifier |
メモリ | DDR3 1GBx1 |
ストレージ | 8GB eMMc Flash |
ネットワーク | 10/100 Mbit ワイヤレスLAN |
OS | Android 6.0 |
カタログスペックを見ると現在発売中の最新タブレットに比べやや見劣りしてしまうかも知れません。
本機は組み込み型(据え置き型)なので頻繁にメンテナンスやアップデートをするわけにもいかないため、枯れた技術仕様は不具合が出にくいといった利点があるからではないかと推測しています。
スペック表から見て実際の性能や特徴など気になる方もいるかも知れませんので、筆者記事ですっかりお馴染みになった忖度なしのスペック表分解説明をしてしていくことにしましょう。
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プロセッサとチップセット
CPUは Allwinner V40 ARM Cortex-A7 1.0GHz です。V40 は40mnアーキテクチャ、Cortex A7 は28nmアーキテクチャなのでやや時代を感じさせるものがありますが、組み込み型で公共的な利用と考えると処理能力はそれほど重要ではないため省電力に定評があるので不満は無さそうです。
※Cortex A7 はシングルボードコンピュータ Raspberry Pi 2 でも採用されていたのでエンジニア系のちょっと詳しい人ならご存知かもしれませんね。 -
メモリ
DDR3 1GB RAM を採用しています。筆者的にはここはもう少し頑張って 2GB 欲しかったと言わざるを得ません。最近のアプリはメモリをバカ食いするためです。(端末の動きが急に鈍くなる最大要因がメモリ使用率の上昇です。)何か追加機能を必要とした場合、基本的にアプリは最新版しか入手できないためもっさり感が生まれストレスに感じてしまうからです。汎用性を前提にしているため利用するのが必ずしも軽いアプリばかりではないと想定すると非常に惜しいポイントです。
もっとも必要最低限は搭載しているので、設定以降ほとんど変化のない自動受付業務などであれば困ることは無いのかも知れませんが……。 -
ストレージ
カタログ値では8GB eMMC とやや心もとないものの、この手の端末はSDカードやクラウド運用が中心となります。メーカー仕様表ではSDカード最大値の記載がありませんがレビュー時実証では SDHC 32GB を問題なく利用できました。また、本機にはOGT端子やフルサイズUSB端子(Type-A)があるので容量で困ることはありません。
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OS
Android 6.x を採用しています。Android の最新バージョンは 2019年9月4日に Android 10 が正式リリースしたばかりですが、OSはあまり新世代すぎるとその分必要性能も上がってしまうので 6.x は絶妙なチョイスとも言えます。現在のところメーカーによるOSのアップデーターは配布していないので本機は6.x のままでメジャーアップデートせず利用するのがベターと言えます。
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液晶画面
今回のレビュー機は13.3型、アンチグレアで解像度はFHD(1920x1080)となります。コントラスト比700:1は屋外を想定するとややはっきりしない暗い印象を与えますがおよそ室内利用に限定すると思われる組み込み型であれば視認性は良好です。視野角も縦横それぞれ178°を確保しているので複数人で一つの画面を覗いての作業も問題ありません。タッチパネルは10ポイントマルチタッチ、画面硬度は7Hとなっています。
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スピーカー
6W(6Wx2)スピーカーを左右に配置しています。音声再生では聞き取りやすさは非常に良好です。やや高音に降っている感がありますがこれが功を奏しており、雑踏の中でも聞きやすく年配の人にも優しい音質に感じました。
音楽を再生することを想定する場合は音声出力用に3.5mmジャックがあるのでそちらにアンプなどを接続し利用すればよいでしょう。 -
外部映像出力
フルサイズのHDMI端子を搭載しているので必要に応じて外部モニタを利用することが可能です。この出力を制御する具rwフィックチップは ARM Mali400 Mp2 Compress with OpenGL ES 2.0/11 です。最大解像度はFHDに対応しているので汎用的な液晶ディスプレイなら問題なく利用可能です。※FHD以上の2.5Kや4Kには対応していません。
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拡張性
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他の追従を許さないほど拡張性は充実しています。拡張性に限っては一般的なノートPCよりも充実しているのではないでしょうか。特にバーコードリーダーやカードリーダーをダイレクトに接続できる RS-232C 通信ポートを搭載しているのは組み込み型(据え置き型)ならではの特徴です。他にもフルサイズのUSB(Type-A)
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ベンチマーク
この手の端末は必ずしもスペックを追求するものではありませんが、本機もやはりデジタルガジェットなので気になるのはそのベンチマークスコアでしょう。
前述のCPUから推測するに高スコアというわけにはいきませんが、ガジェットのベンチマークと言えばみなさん大好き Geekbench4 で計測したのでご覧ください。
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結果としては最新モデル並みとは言い難い印象ですが同系統CPUの標準的結果ではないでしょうか。もちろん上位の 4コア端末やそれ以上のコアを搭載した端末には遠く及ばないのでマルチスレッドが生きてくるような作業は苦手としているようです。公共施設や企業の受付業務などの基本作業用途と割り切った使い方であれば心配することは無さそうです。
オンリーワンを目指して
ライバルの存在
今のところこの端末にライバルは少ないと言ってよいでしょう。
12~13インチクラスの大型タッチ画面という点だけで見ると 他のAndroid 端末の場合はそもそもサイズがありませんし、その他はiPadProが思い浮かぶかと思いますが、高額なiPadProでは導入費用という点で勝負になりません。強いてあげるとすれば同サイズの Windows 10 端末でしょうか。但し、Windows系OSの場合はOS自身の頻繁なアップデートやメンテナンスが必要なのと本体性能の要求値が高いのでこちらも微妙なところです。
ここが便利
本機の利点は大きく分けて3つあり、「バッテリーレス端末」「大画面Android」「拡張端子が豊富」という点になります。
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バッテリーレス
バッテリーレスについては常時AC電源供給になるので発熱や長らく使用することによる膨張の心配もありません。一般的なリチウムイオンバッテリーは様々な理由により熱暴走や火災リスクがありますが、初めからバッテリーを搭載していないため美術館や図書館など繊細な管理が必要な場所での利用でも安心と言えるでしょう。
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大画面 Android
大画面のAndroid と聞くと真っ先に思い出すのは大型テレビでしょう。大型テレビの場合はそもそもがタッチパネルではないため操作にリモコンが必要になりますし、テレビメーカーによりカスタマイズされたOSなのでインストール可能なアプリケーションも限られています。その点で本機は通常のタブレット端末なので通常の Google Playストアにアクセスし各種アプリのインストールが可能になっています。
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拡張端子が豊富
一般的なタブレットの場合は唯一の端子である Micro USB-B 端子からハブを経由させますがそれでも排他利用だったりハブの能力不足だったり何かと対応できない周辺機器が出てきてしまいます。ですが本機は Andoroid タブレットなのに USB Type-A ポート(通常のUSB端子)やRS-232C、フルサイズHDMI、イーサネットRJ45端子、フルサイズSDカードスロットがついています。もちろんこの他にもSIMスロットや音声出力・マイク入力など汎用端子もありますが、端子の豊富さがどれだけ便利なことかは言わずともご理解いただけるでしょう。この他にVESA規格に準拠したマウント取り付けが可能(本機は VESA 100mm 対応)となっています。
拡張端子一覧
SDカード ×1 SIMスロット ×1 USB 2.0 ×2 シリアルポート ×1 10/100Mbit RJ45(POE) ×1 8/18V DC(ねじ式電源ポート) ×1 HDMI ×1 GPIO ×1 マイク入力 ×1 音声出力 ×1 W-LANアンテナ ×1 USB-OTG ×1 -
アンテナや電源ケーブルの取り回しに評価
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運用での一番のウィークポイントとも言えるのが電源ケーブルの外れです。据え置き型の場合は電源ケーブルの脱落イコール業務の停止を意味するわけですが、本機はこれをねじ式とすることで脱落を防止しています。引っ張っただけでは外れないので振動などで勝手に抜けてしまう恐れもありません。
また、Wi-Fiアンテナは感度調整可能な外付けアンテナ端子が搭載されているため、障害物などで電波の弱いエリアであってもある程度の感度が得られるのでWi-Fi親機から離れた場所に設置する際に恩恵を得られます。
ここが惜しい
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時代を感じさせる基本設計
ストレージに関しては拡張性があるのでそれほど気になるものではありませんが、必要にして十分な性能を有しているとは言ってもメモリ1GBはやや不足に感じてしまいます。特に最新のアプリをインストールしてゴリゴリ動かす場合はやはり力不足は否めません。ゲーム開発会社の製品レビュー会場でメモリやCPUを極限まで利用するようなデモ展示などは向かない用途として挙げられます。
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超高画質映像の長時間再生は苦手
最近のYouTubeなど動画投稿サイトの主流は最低でもFHD 30FPS。標準でFHD 60FPS、高画質では4Kとなっています。このようにデータサイズが年々肥大していくのでネットだけでなくローカルストレージ内の動画でも標準以下でループ再生であれば問題ないですが、高画質映像を流したままにする場合はデータの処理遅延が懸念されます。
推奨用途
前述のとおり本機のスペックや仕様から見ると用途は限られて来ます。公共的には美術館や博物館の案内用途、病院の受診受付、図書館の貸し出し端末だったり。ビジネス用途であればイベントの自動受付、出荷伝票の管理、レジスターなどや来社受付業務など。これらの用途には専用設計かと思ってしまうほどハマる製品とも言えます。
written by ジーン・タイラー © 2019本記事をご覧いただきご興味を持った際は下記よりお見積り・購入相談を受け付けております。パソコン本体から周辺機器、オフィス什器までお気軽にご連絡ください。
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