外回りや出張の多いビジネスマンに最適な VAIO Pro PA 実機レビュー

営業職における働き方改革とは何か。

活動時間に関しては企業ごとに違うためここでは触れませんが、それ以外の要素である「環境」を見直すことは働き方改革の重要な要素と考えてよいでしょう。環境に縛られず効率よく仕事をすることが重要であると考えられています。

では「環境に縛られないこと」を具体的に実現するにはどうすればよいのでしょうか。
一般的に「環境」という概念はオフィス内に限定せず外出先での仕事も含まれます。
打ち合わせで立ち寄ったカフェでの作業や出張の際の移動中(新幹線や航空機)の資料作成、場合によっては自宅での作業も含まれるでしょう。「場所や時間にとらわれず仕事ができる環境」ですね。

ですが、本当に「場所や時間にとらわれず仕事ができる」のは「環境」だけなのでしょうか。今回新たにそんな疑問に応えるかのように「端末」という要素を持ち込んだ VAIO社 の新しい 2in1 が登場しました。

  • 通常の利用では満足のいくスペック
  • モバイル性重視のサイズ感、軽さ、バッテリー容量
  • 環境に応じたトランスフォーム

これらを兼ね備えたのが VAIO Pro PA になります。

とは言え、もちろんこの端末で万人が満足するわけではありません。
クリエイター目線で見れば本機ではやや役不足と映るでしょうし、総務や経理業務では画面サイズの点でやや不満が残るかもしれません。ですが、オフィスを飛び出す営業職の方々には次のような理由により本機の良さが最大限発揮されることになります。

・オフィスではノートPCとして拡張性を優先
・外出ではその軽さに助けられることもしばしば
・客先ではキーボードを外し電子カタログを表示しながらの商談

類似の 2in1PC は各社が多く発売していますが、本機のように「処理性能を維持したまま持ち出しに特化しつつ拡張性を確保している」端末は今までありませんでした。

そこで今回、カタログスペック上ではわからない使い勝手を中心にレビューしていくことにします。

外観インプレッション

テーブルの上に置かれた状態での印象はノートPCであり「VAIO PRO PG」と近いものがあります。

ですがこのPCは「VAIO PRO PG」などの通常のノート型PCとは違ったいくつもの顔を持っています。

状況に応じて下記5パターンに変形
・クラムシェル型の「ノートPCモード」
・タブレット単体での「タブレットモード」
・クラムシェルを180度反転した「ビューモード」
・画面を閉じた「ビュークローズモード」
・分離状態で操作ができる「ワイヤレスキーボード」
これらにより環境適応能力が向上し今まで以上に柔軟な対応が可能となります。

外観概要

2in1 ということもあり状況に応じて サイズ・重量・形状が異なるのが本機の特徴ですが、外観チェックでは「ノート型」を中心に見ていきましょう。

  キーボード装着時 タブレット単体時
外形寸法 約 幅305.5mm×高さ17.0~21.0mm×奥行211.9mm 約 幅305.5mmx高さ7.4mm x奥行199.4mm
重量 約 1.099kg~1.114kg 約 607g~622g
インターフェース USB3.0×1 給電機能付き×1、USB2.0×2、HDMI×1、ミニD-Sub×1、LAN(RJ45)×1
および右記インターフェース
USB-C×1、ステレオミニ端子(ヘッドセット対応)×1

インプレッション

各変形以外で目を引くのはキーボード部に備え付けられるフラップの存在ではないでしょうか。
このフラップにより他の 2in1PC にありがちな膝の上に乗せた際の不安定感が軽減され、ノートPC本来の安定感をもたらしているようです。テーブル以外でのイレギュラーな作業時では特に類似機種である SurfacePRO の膝上での不安定さと比べると雲泥の差がありますね。

持ってみた印象ですが、「軽い」ですね。キーボード込みでも 約1.1kg と軽いPCの代名詞でもある Let’s note に引けを取りません。
さらに、分離可能なキーボードを外しタブレット状態(またはワイヤレスモード)にすると 約600g となり軽さが際立ってきます。この重量なら本体+キーボードだけでなくACアダプターやマウスなど周辺機器を一緒に持ち運ぶことも可能でしょう。

質感・操作感など

天板は艶消し黒の塗装で中央にVAIOのロゴが鏡面仕上げで鎮座しています。このデザインはもはや VAIO 定番となっているので説明するまでもないでしょう。鏡面ロゴ部分を除き指紋は付きにくいようですが、皮脂はこの限りではなく、一日中使用しているとかなり目立つこともあり度々の拭き取りが煩わしいかもしれません。また、タブレットには珍しくリアカメラ(天面側カメラ)が非搭載になっています。フロントカメラは利用可能なので普通のノートPCと考えれば普通なのですが、タブレットモードにした場合は物足りなさがあるかもしれませんね。

タブレット部についてはエッジのきいたデザインなのでやはりガラス板と言う印象が強いです。ガラス面全てが液晶部分と言うわけではなくベゼルはかなり大きめ、実際の表示エリアが12.5インチでも実際の外形寸法は約14インチとなっています。また突起が皆無なのでそのままカバンに入れてあったとしてもどこかで引っかかったりすることもありませんが、キーボードを脱着しながらの利用を想定しているため、カバーなどで保護できないので落下などには注意が必要です。唯一残念な点はタッチパネル利用のタブレットゆえにガラスの反射が大きいことです。特にオフィスでの蛍光灯では写真のとおり反射してしまうので角度を変えて使うか自分で動くなどアクションが必要でしょう。

脱着式のキーボードを見れば一番目立つのはやはりスラップでしょう。このフラップによってノートPCモードでの本体安定感をもたらしています。また、パームレスト部分を含めたキーボード周辺の質感は高級感があります。シルバーのヘアライン処理は指紋が付きにくく汚れがあまり目立たないようになっているようです。キーピッチは御覧の通りあまり使いにくいといった印象は無く打ちやすいものに仕上がっています。但し、よく利用するESCキーやファンクション(F1~F12)キーが小さく、カタカナ変換や半角変換などでよく利用する方は打ちにくいと思うことがあるので注意が必要です。

スペック

今回お借りしたデモ機では次のような構成となっています。

製品名称 VAIO Pro PA
製品型番 VJPA111CAL1B
OS Windows10 Pro x64
CPU Intel Core i5 8200Y(1.3GHz)
メモリ 8GB
ストレージ SSD 256GB(Serial ATA)
液晶 12.5インチ タッチ付きディスプレイ
1920x1080 マルチタッチ
バッテリー タブレット単体利用時:7.7-8.5時間
キーボードユニット接続時:74-8.1時間
通信 WAN: 3G/LTE対応MicroSIM
WiFi: IEEE 802.11a/b/g/n/ac
Bluetooth: Bluetooth 4.1
キーボードユニット接続時は有線LAN利用可

スペックだけで見ると足を引っ張りそうなものは無さそうですが、今回もいつもどおりベンチマークを踏まえて各部の解説とチェックをしていきましょう。

CPU

CPU は Intel Core i5 8200Y (1.3GHz/ 1.6GHz) を採用しています。このCore i5 8200Y は第8世代(Amber Lake)で2018年に登場し、ひとつ前の第7世代から大きく性能を上げており TDP5W ながらも2コア4スレッド 1.3GHz(TB時は1.6GHz)で駆動し大幅なバッテリー持続性を確保しています。
……と型番を見て瞬時に理解できるのは一部のCPUマニアだけなのでここではこのCPUについて詳しく解説しておきます。

例によって型番を「Core i5」「8200」「 Y 」のように分解して見ていきましょう。

Intel社製の CPU は性能順に Core i9/i7/i5/i3 > Core M > Pentium > Celeron > Atom となっています。そもそも Core i シリーズは最上位CPUなのでその性能には定評がありますが、中でも Core i9 やCore i7 はプロフェッショナル用途、Core i5 は一般向け上位、Core i3 は普及モデルという位置づけです。Core i5 はこのことからも一般向け上位のCPUであることがわかります。
※ サーバー用CPUを除く

次に「8200」とは第8世代のCPU(Amber Lake-Y)であることを表しています。
第8世代のモバイル向け Core i5 は多くの種類が発売されていますが、中でもこの「Amber Lake-Y」は新しいCPU(2018年4月発売)なのでこれまでに培った技術や思考をもとに作られたモデルになります。

末尾の「 Y 」モデルとはどのような特性があるのでしょうか。もともとCPU は消費電力と処理性能どちらを取るか選択を迫られます。常時電源供給されるデスクトップはともかく、ノートPCはその特性からバッテリー駆動が大半です。そこでノートPC向けの CPU は利用状況に応じ 「 U 」と「 Y 」に分類しているのですが、この「 U 」は性能重視のTDP15W、「 Y 」は省電力のTDP5Wとなります。「 Y 」モデルはどちらかと言うと「Core M」シリーズに近い性能と言われますがそれでも上位のCPUなので処理能力と消費電力のバランスをとったモバイルにぴったりの性能を持っています。

ついでにCPU内蔵のグラフィックについても触れておきましょう。
このCPU に統合されているGPU は Intel UHD Graphics615 を採用しています。このUHD615 はDirectX12 をサポートしているので 普通のブラウジング、ビジネスソフトの利用、動画再生なども問題なくマルチに対応できるでしょう。とはいえ3D(CADやゲーム)は不得意分野なのでそれらをしないことを前提とした割り切りが必要かもしれません。もっとも、仮に3Dに対応していたとしてもCPU性能(クロック速度やコア数)が追い付かず厳しいものがあるのですが……。

OS

もはやビジネスシーンでも定番となった Windows 10 Pro x64 を採用しています。
64bit版を採用することでメモリのボトルネックを解消して快適な環境を確保しています。また、このProは Home版にはない様々な機能(BitLockerやドメイン参加、リモートデスクトップなど)があるので活用してみてはいかがでしょうか。

メモリ

標準8GBを搭載しています。タブレット型のため増設は望めませんが、客先でのプレゼンや移動中やカフェでの資料作成などでも固まらない必要にして十分なメモリ領域を確保しています。
マルチタスク作業でもデータスワップによるストレスを感じることは無いと言えます。

ストレージ

本機で採用しているのは Serial-ATA 接続の SSD 256GB になります。昨今のPCIe 高速ストレージに比べるとスペック上では見劣りするかもしれませんが、体感としては誤差レベルで、このストレージが超高速であることは間違いありません。容量についても256GBあるのでOSやソフトウェアだけでなくドキュメント類、プレゼン動画ファイルなどを入れてもまだ余裕があります。

液晶

FHDのIPS液晶を採用しており非常に発色が良いです。
本機は2in1という特性上、タッチパネル搭載となります。このため画面はガラス部分は反射を覚悟しなければなりません。特にノートPCモードでは蛍光灯の反射が気になりました。また、タッチ画面をペタペタ触るせいで指紋や皮脂による汚れも目立ちます。クロスが付属していますが気になる方は定期的なふき取りが必要かもしれません。

バッテリー

キーボード装着時 タブレット単体時
約 7.4-8.1時間 約 7.7-8.5時間

この表から公称で形態を問わず7~8時間利用できるようです。実際には公称値の8割程度と言う認識が一般的なので6時間程度と考えておけばよいでしょう。使用頻度にもよりますが朝から夕方までは何とかなりそうな駆動時間です。もしそれでも不安が残る場合、外出時に充電器を持参することをお勧めします。

通信

無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n/acに対応しており、その他の無線通信ではBluetoothが4.1に準拠となります。このほか、ノートPCモードで利用可能な有線LANポートを備えているので出張先のホテルでも安心してネット利用が可能です。

そして本機の目玉ともいえるのがSIMスロットを搭載している点です。もちろんSIMフリーで3GおよびLTEに対応しています。
LTEのバンドは1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 12, 13, 17, 18, 19, 20, 21, 25, 26, 28, 29, 30, 38, 39, 40, 41, 66 に対応しているため国内や主要国であればキャリアを問わず利用可能 です。
※ バンドの利用にはWindows上でプロファイル設定が必要です。

その他

本機にはメーカーオプションとして下記が用意されています。特にスタイラスペンは敢えて付属させなかったことで導入コストを抑えることに成功しています。
契約のサインを画面上で求める場合や手書きプレゼンなどで利用を検討している方は必要に応じて購入してみてはいかがでしょうか。


written by ジーン・タイラー © 2019
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