実は筆者の中では10インチクラスのPC/タブレットのイメージはマイナスイメージ、イマイチ感があった。今まで発売された10インチPCのスペックは軒並み下記のようなものだったためだ。
Atom 800MHz~1.2GHz、eMMC 32GB、2GBメモリ、Windows Home……。
大手メーカーでさえCPU性能、ストレージ、メモリ容量を犠牲にして作りましたといったPCばかり。
……そんな「欲しくないスペック」だった10インチ市場で大暴れしているのが2018年夏に登場した Surface GO である。
その後半年近くをかけLTEモデルなどをラインナップに加え、「欲しくなる10インチPC」として不動の地を得た。今回は そんな Surface GO をお借りしたのでレビューしていくが、残念ながらLTEモデルではない点をご了承いただきたい。
そもそも持ち運びを前提とした10インチクラスPCで市場が求めていたスペックとは何なのか。これを理解せず10インチPCの選定は難しいだろう。
思うに市場が求めいていたスペックは「それなりに高性能なCPU」「大容量メモリ」「精細な液晶画面」「大きなストレージ」「Windows Pro」である。これに呼応するかのようなPCが Surface GO となるのだが、まずはお借りしたデモ機のスペックを見てみよう。
スペック
今回のデモ機では次のような構成となっている。
製品型番 | JTS-00014 |
---|---|
OS | Windows10 Pro x64 |
CPU | Intel Pentium Gold 4415Y |
メモリ | 8GB |
ストレージ | SSD 128GB |
液晶 | 10インチ PixelSenceディスプレイ 1800x1200(217PPI) 光沢液晶 10点マルチタッチ |
バッテリー | 9時間の連続動画再生可能 |
数値で見ると上記のようになるが、10インチのサブ機としては全体的にバランスの撮れた構成となっている。ここではこれらの数値だけでは見えてこない部分を含め、各部を掘り下げて見てみることにしよう。
OS
本機は法人・教育機関向けモデルということもあり、Windows10 Pro を採用している。
そのためBitlockerをはじめとするセキュリティー強化や一元管理可能なドメイン参加などが可能になるなど厳格な仕様が求められる法人や研究機関、学校などにマッチする構成となっている。
CPU
Pentium Gold 4415Y(1.6GHz 2コア4スレッド 第7世代 )。
型番からもわかるとおり Core i シリーズではなくPentiumを採用している。上記キャプチャ画像(中央および右側の図)では KabyLake つまり第七世代と読み取れる。TDP6Wと低電圧ながらも処理性能とバッテリーの持ちを両立させつつモバイルに最適化させた絶妙なチョイスではないだろうか。
読者諸氏はCPU型番を見てもあまりよくわからないかもしれないので簡単に Pentium Gold 4415Y を解説しようと思うのだが、まずはCPU名称を3つに分解してそれぞれを理解していこう。
・Pentium
この名称を語るならばそれこそ20年以上も過去の歴史を振り返る必要があるが、
現在の Pentium の位置づけとしては Core i3/i5/i7/i9 > Core M > Pentium > Celeron > Atom となっている。
処理優先の Core i シリーズを性能を落とし省電力に特化させた Core M をデチューンし価格を抑えたモデルということになる。
・Gold
「Gold(金)があるので Silver(銀)もある」という認識で構わないが、どちらが性能上位かわかりやすい表記となっている。Gold は Core i シリーズと同じ製造方法が用いられ、Silver は 性能を抑え省電力に特化したAtomの流れをくむ製造方法が用いられているため Gold が上位となる。
・4415Y
4415Y は「4415」と「Y」に分解すると理解しやすい。
順序が前後するが「Y」については「Gold」を細分化したもので U型・Y型 に分類される。 U型・Y型のどちらもノートPCに採用されることが多いのだがその性格は大きく異なる。性能が高いのはU型となり、Y型は性能を抑え省電力に特化している。
「4415」についてはIntel社の製品ナンバーを表している。下記の表を見ると4415Yは2コア4スレッド/1.6GHz/TDP6W/intelHD615 ということがわかる。
Pentium Gold 4415Y | Pentium Gold 4415U | |
コア/スレッド | 2/4 | 2/4 |
周波数 | 1.6GHz | 2.3GHz |
消費電力 | 6W | 15W |
グラフィック | Intel HD 615 | Intel HD 610 |
これにより 「 Pentium Gold 4415Y 」は
すごく省電力になるようコア数やスレッドを調整しながら……Pentium
基本設計ではスペックを落とさないで済むよう調整……Gold
クロックを落として省電力に特化させたCPU……Y
要約すると 「超超省電力にしたいのでコア数と周波数を落として駆動時間を長くしたCPU」ということになる。
メモリ
本機はメインで利用するというよりはサブ機の位置づけとなり、客先でのプレゼンや移動中やカフェでの資料作成などで活躍すると思う。このため大容量メモリは不要と思われるものの標準で8GBを搭載している。このおかげかマルチタスク作業でもデータスワップによるストレスを感じることは無いと言える。
※下位モデルは標準4GBとなります。
※メモリ増設はできません。
ストレージ
高速ストレージSSDの 128GB を採用している。冒頭の画像(画像左側)で見るとシステムで38GB使用しており、一見するとあまり大きな容量ではないように感じるが、あくまでサブ機の位置づけである点、クラウドが発達している点を考慮すると必要にして十分な領域が確保されていることになる。また、アクセス速度も読み込みは圧倒的な速度でストレスとは無縁だろう。対して書き込みは遅い感が否めないが、一般的なHDDと遜色ないレベルなのでそれほど心配することもないかもしれない。
※下位モデルは標準64GB eMMCとなります。
液晶
画面解像度は標準で10インチ 1800px × 1200px となっているが10インチでこの解像度(100%表示)だと実務作業では表示文字がやや小さい。
メーカーの推奨表示サイズは150%なのだが今度は大きすぎる。筆者の利用環境下ではこの中間の125%表示がベストサイズとなった。
バッテリー
実測していないためあまり参考にならないが、一般的なノートPCの感覚で使ってみたところバッテリーは減りが遅いといった嬉しい誤算があった。もともと負荷のかかる動画再生で9時間を公称しているため通常の使い方であればACアダプタの持参は不要かもしれないが、過去の Surface Pro バッテリー問題(※)によりバッテリーに関しては筆者も言及は避けたいと思う。
※同社製 Surface Pro 3 に起きた致命的な不具合で後日ファームウェアのアップデートで対応した過去がある。
通信機能
IEEE802.11a/b/g/n/ac WiFiは一般的なものは網羅しているので不自由することはない。
本機はWiFiモデルなのだが、LTEモデルも存在するため外出先でネットを気軽に利用したい場合はモバイルルータ無しでのモバイル運用が可能となるためそちらがお勧めだ。
拡張性
このクラスのPCに拡張性を求めるのはどうかと思うのだが、基本的に Bluetooth や WiFi などの無線環境が基本となる。
幸いなことにmicroSDカード対応なのでストレージの拡張性は確保している。もちろんストレージが不足した場合だけでなくデジタルカメラのデータ取り込みなどでも活躍するだろう。
その他ポート類では3.5mmヘッドセットジャック×1、SurfaceConnect端子(通常は電源接続用ポートとして利用)×1、USB-C×1の構成だが、USB-Cポートは今のところ変換アダプタが必要な機器ばかりなので不格好になるのは否めない。
変換アダプタで不格好な本機
内蔵カメラ、センサー類
カメラはフロントとリアにそれぞれ搭載されており、フロントカメラは 5.0Mピクセルで Windows Hello に対応している。これにより顔認証サインインが可能となりセキュリティー保護に貢献している。リアカメラは 8.0Mピクセルでオートフォーカス対応。
その他搭載されるものとして内蔵マイクやスピーカー、センサーは光、加速度、ジャイロスコープ、磁気の各センサーを採用している。
スペックから見る Suraface Go の位置づけ
外出先でエクセルのデータを表示し修正する、一般的なブラウジング、数枚程度の画像編集などであれば大きな障害はないものの、クリエイティブ作業(LigntroomやPremierProなど)はやや厳しい印象だ。ソフトウェアの起動が早くキビキビした動きがある反面、重い作業では動作が緩慢になるあたりはCPUが追い付いていないものと思われる。
外観と寸法
スペックについて駆け足で見てきたが、持ち出し型PCは外観も重要な構成要素である。
外観と重量などは下記のとおり。
外形寸法 | 約244.00mm × 175.00mm× 8.30mm |
---|---|
重量 | 522g(タイプカバーを含まず) |
インターフェース | USB-C×1 microSDXCカードリーダー 3.5mmヘッドセットジャック SurfaceConnect(充電・ドッグ用端子) キーボード接続端子 |
偶然にも兄貴分でもある12インチの Surface Pro LTE が手元にあったため並べてみたが、そのサイズの違いは一目瞭然である。
ベンチマーク
既出だがCPU は Pentium Gold 4415Y(1.6GHz 2コア4スレッド Kabylake 第7世代 )で TDP 6W を搭載している。
GPU は CPU 統合の Intel HD Graphics 615 を採用している。バス幅128bit、クロックは300MHz/850MHz、DirectXは12をサポートしている。
これらを踏まえたうえでCINEBENCH R15で簡易計測してみたが、良くも悪くも「Pentium Gold 4415Y」の特色を表しているようだ。
結果が必ずしも本機の性能を表しているわけではない点にご留意いただきたいのだが、10インチクラスのサブPCで2コアの低価格CPUとしては比較的高い結果であり、そこそこイイ線行ってるという充足感がある。もちろん上位の Core M や Core i シリーズには遠く及ばないのでマルチスレッドが生きてくるような作業は苦手としているようだ。
気になるライバルの存在
さて、そんな Surface Go のライバルと目されるのはやはり同サイズ帯の iPad /iPad Pro だろう。
市場には新旧のiPad /iPad Proが数多く出回っているのでもはや説明は要らないと思うが、12インチを除く歴代のiPadProは有力な対抗馬となる。さらに iPad(2018) ならApplePencilの利用も可能なためこちらもライバルとしての候補に挙がってくる。両者を比較するとサイズはほぼ同等。価格面では選択肢が多い iPad /iPad Pro がやや有利だが iPad Pro だけと比較するとこちらも同等だろう。
とは言え、一般的にビジネスではWindowsがやや有利、クリエイターならiOSに軍配が上がるのは間違いない。
では「Surface Goに向いている」、「iPad /iPad Proに向いている」の分岐点はどこにあるのだろうか。
Surface GoとiPad /iPad Pro で悩む
参考までに筆者の愛用している初代 iPadPro 9.7インチと比較してみたがサイズ感はほぼ同じである。
Surface Go はWindows10 パソコンなのでマウスが使える。もちろん画面タッチも利用できる上、キーボードカバーのトラックパッドも利用可能なため不自由はない。さらにSurfaceペンを利用することで入力に苦労することは無いのでこれらは大きな魅力と言えるだろう。それに今まで利用していたソフトウェア資産がそのまま生かせるのも非常に大きなポイント。同社のソフトウェアでもあある Office/Office365 との親和性は抜群。特にエクセルでは通常のマクロが利用可能で、「正しく実行されません」「マクロを利用するには……」といった制限によるストレスとも無縁となる。
また、マルチタスクでの作業が当たり前のWindows環境に慣れてしまうとやはり iPad /iPad Pro より便利に感じるかもしれない。だだしマルチタスクが可能と言ってもあくまで「可能」というレベルであり、性能は他のノートパソコンには及ばないため負荷がかかる作業は緊急時のみと割り切ることが賢明かもしれない。そして何よりUSBデバイスを利用できる点、フリーソフトを利用できる点は見逃せない。
一方で iPad /iPad Pro はiPhoneとの連携が容易。このためリマインダーを生かしたスケジュール管理や各種アプリケーションなどで同期させシームレスに活用したい方には最適となる。またmacOSとの相性も抜群なため、「現場で手書きし帰社してmacで編集」などファイル転送作業無しに可能になる。そのほか映画や動画コンテンツを活用させたい場合もかなり重宝するはず。その反面でオフィス系アプリケーションの編集作業はマクロに制限があったり、導入可能なアプリケーションは App Store からのみであったりとWindows勢と比較するとやや後塵を拝することになる点は注意が必要だ。
Surface Goがお勧めの人
・マルチタスク環境で作業したい
・会社の基幹システムへの連携や指定ソフトウェアが必須
・マルチメディアと言うよりはエクセルやパワーポイントなどビジネスソフトウェアの利用がメイン
iPad /iPad Proがお勧めの人
・iPhoneやMacとシームレスに連携させたい
・動画などのコンテンツを活用したい
・よくイラストを描く
どちらもそれぞれに目的が異なるとはいえ、比較した感じでは甲乙つけがたいため、ここではデザインやンテンツ系を活用したいなら iPad /iPad Pro 、オフィス系ソフトウェアを中心とした利用なら Surface Go といった住み分けがお勧めだ。
持ち出しに最適な Surface GO を出費を抑えて賢く使う唯一の方法
そんな Surface GO だが、一番のお勧めはやはり「持ち出し」だろう。
持ち出しを考えるならネット環境を用意しなければならないが、2018年11月より本機には LTEモデルが追加ラインナップされている。とは言え、LTEモデルの導入は本体の購入だけではなくSIMの契約、各種設定など環境整備だけでも大きな労力となってしまう。初期費用を抑えつつこれを解決できるサービスをご存じだろうか。
せっかくなのでこのLTEモデルを月間3GBの通信込みが月額3,980円で利用できる FUKURY mobile をご紹介したい。
この FUKURY mobile では様々な機種を毎月定額で利用できるサービスなのだが、2018年12月より Surface GO も選択できるようになった。これにより今まで設定が大変だからと躊躇していた中小企業の経営者層も手が出しやすくなったようだ。このサービスは初期設定はもちろんのこと3GBの通信料まで込みということで届いてすぐにネット接続&利用可能となっている。煩わしい設定も不要なため、機械にあまり詳しくない場合でもストレスフリーで快適な環境を構築できる。
お問い合わせ先URLを張っておくので一度検討してみてはいかがだろうか。