完全なノイズキャンセリング?!骨伝導ならぬ皮膚伝導で伝える新しいマイク

「申し訳ございません、もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか。」

「〇〇商事の△△だけど……、ちょっと聞こえてる?うるさくて何言ってるかわからないんだけど!」

伝えたいことはたくさんあるのに、周囲の雑音のせいで全然伝わらない、そんな経験ありませんか?


上記は騒音目安になりますが、この表のように音の大きさは db(デシベル)で表し、数値が大きいほどに大きな音ということになります。一般的に電話の音声は周囲の雑音が50dbを超えてくると正確に伝わらないことが増えてきます。上記によれば騒音の目安としてパチンコ店の店内で80db、走行中の自動車内で60~70dbです。この域になると意思の疎通はほぼ困難になってしましまうのはご承知のとおりです。ですが、70dbや 80dbの喧騒の中で周囲の音をカットし自分の声だけを相手に届けることが可能だったら……

皮膚伝導とは

振動を音として考える

少しでも音に興味のある方は「骨伝導」という言葉を聞いたことがあるかと思います。骨伝導とはその名のとおり骨に伝わる音の振動が骨を導体として直接聴覚神経に伝わるものです。一般的な製品として「骨伝導ヘッドホン」が有名で約10年ほど前から製品化されており、最近では大型の家電販売店などでも見かけるようになりました。他方、医療補助目的としては骨を導体としているので外耳を経由せずに音を直接内耳へ届けるため外耳や中耳に障碍のある方の補聴器としても利用されています。「骨伝導」については基本的に音を聴くことに特化しているため本稿とは直接関係がないので割愛させていただきますが、似て非なるもの「皮膚伝導」とはいったいどのような仕組みなのか見ていくことにしましょう。

皮膚伝導の仕組みと製品化

骨伝導で骨を導体としていることはご説明しましたとおりですが、「皮膚伝導」についても音を振動で伝えるという基本的な仕組みは同じです。詳細は専門的になるのでここでは概略だけに留めますが、自分の話した声によって起きる喉の振動が皮膚(上皮)に伝わるのでこの振動を拾って音として収音するといった仕組みです。首をおさえながら「あー」と発声したときに手に振動が伝わってくるので興味のある方は実験してみてください。皮膚伝導ではこの皮膚に伝わった音の振動だけを拾うため空気の振動によって聞こえてくる「周囲の雑音」をほぼ拾うことはありません。こうしてこの技術をマイクに転用した製品が 長塚電話工業所 皮膚伝導マイク(ND80-P003)になります。

長塚電話工業所 皮膚伝導マイク(ND80-P003)

先程の話の中でも触れたようにこのマイクはマイクを装着した皮膚周辺に伝わった音の振動だけを拾います。このため街の雑踏の中、遊技場、工事現場などの騒音がひどい環境であっても周囲の音をカットし話者の声だけを相手に伝えることができるのです。文章では説明するには難しい部分がありますのでまずは下記の動画をご覧ください。

ご覧いただいたのはまたまたご登場いただきました youtuber 長谷川幸一氏(長塚電話工業所) /  による検証動画になります。騒音によって通常の会話も難しいパチンコ店での音声通話の様子です。これほどの騒音の中でも周囲の音がカットされているのは圧巻ですね。

【製品特徴】

皮膚伝導によるノイズ除去

音を拾う従来のマイクと異なり、皮膚の振動によって言葉を伝えるので、周囲の音は伝わりません。本人の言葉のみを正確に伝えます。

ヘルメット装着時も利用可能

首にマイクを装着するため、建設現場の必需品、ヘルメットとの併用が可能です。もちろんフェイスガード装着時であっても本体は首元に装着するためご利用可能です。

おすすめ利用シーン

工事・建設現場での通話

賑やかな店舗でのインカム

機器室での遠隔指導

【実機検証】

内容物・外形

製品パッケージ

皮膚伝導マイク付アダプタ本体
(型名:ND80-P003)
※皮膚伝導マイク部は防滴 IPX1相当です

付属モノラルタイプイヤホン
(パナソニック製:RP-EP310)

取扱説明書、兼保証書

皮膚伝導マイク付アダプタ本体

付属モノラルタイプイヤホン

取扱説明書、兼保証書

接続

接続はお使いのスマートフォンやノートパソコンの3.5mmジャックに挿すだけなので全く難しくありません。ただし、iPhone7 以降の iPhoneユーザーの方は【lightning to 3.5mm】の変換ケーブルが必要であったり、4極ケーブルゆえに一部のデスクトップPCでは3.5mmマイク・イヤホン分岐ケーブルが必要になる場合があります。この2点だけは注意ですね。

3.5mm 4極端子

操作

本体のコントロールスイッチ

話すときはスライドを緑に、ミュートしたいときにスライドを赤に
→正直ずっと緑でもいいのかな?と思いますが、皮膚伝導ゆえにドリンクの飲下などの音を拾ってしまうのでその配慮といったところでしょう。

着信を応答…スイッチを短押し、通話終了時…スイッチを長押し
→スマートフォンを取り出さずとも着信応答ができます。

実証と使用感

実証結果

サーバー室での比較

・スマートフォンのみでの利用
→サーバーの音がうるさい、聞こえるがうるさい。結果として何度か聞き返すことに。

・皮膚伝導マイクで会話
→どこにいるのかわからない。周囲の音が遮断されているので本当にサーバー室にいるとは気づかない。横で同僚が話しかけて来た声もマイクでは全く拾わない。

【使用感】

通常のマイクでの通話と比べると少々籠った音になってしまうようです。しかし、あくまで騒音下での通話を想定しているので聞き取れるレベルでの集音ができる点については評価できるでしょう。コントロールスイッチについては反応も悪くないので使用する上で問題になるところはありませんでした。

これは個人的に思うことなのですが、緑・赤の切り替えスイッチがスライド式ではなくボタンタイプであれば良いのではないかと思いました。というのも皮膚伝導という特性上、小声であっても声帯が発した振動を集音してしまうためこっそりつぶやいた声も拾ってしまいます。これを回避するために頻繁にミュート切り替えることになりそうなのでスライドよりボタンであればと思う次第です。

ここが気になる

やはり製品の接続方法が有線接続のみという点は編集部内でも賛否両論ありました。別モデルとしてBlutoothモデルを用意してあるなどであれば切り分けができるのですが、本製品は3.5mm接続のみです。筆者のような公私ともに生粋の iPhoneユーザーは別途変換アダプターの購入が必須となりますし、作業環境によってはケーブルが引っかかると危険な場面もあることでしょうし、そうでなくてもケーブル接続を煩わしく思う方もいるかもしれません。メーカーさんにはそのあたりお伝えしたのでいつか改善されることを願っています。

検証後記

皮膚伝導という耳慣れないワードで、なかなかどうかな~と思っていたのですが、使ってみるのが一番でした。このままでも十分活用シーンはあるのですが、やはりBluetooth対応であればと思わずにはいられません。そして本製品との組み合わせでノイズキャンセリングイヤホンと併用すれば過酷な騒音環境下であってもかなり快適に会話できる用に思います。導入前にそのあたりの検証をご希望の法人様、デモ機を手配可能なのでぜひ下記よりお問い合わせください。

écrit par Lierre MULLER ©2021

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