VAIO Pro PG 実機レビュー

今、企業がモバイルPCに必要とするものを吸い上げたVAIO社の「カタい」モバイル

Windows95発売以降スタイリッシュでユーザー目線な国産パソコンで真っ先に思い出すのがVAIO。

ここ最近(2016以降)の国内メーカー製パソコンはどのメーカーのものを購入しても極端な外れは無くなってきました。
パーツメーカーの技術向上と業界の再編が進み、スペックを見れば大抵の性能がわかるようになったため機能差というよりは「デザインの好み」で選択するようになったためです。とは言え、国内メーカー製のパソコンは高いというイメージが定着。それ故に海外メーカーのPCへと流れてしまう。

そもそも外国製パソコンに押され、国内メーカー製PCが受け入れられなくなった原因に「ガラパゴス化」が挙げられます。これは以前のガラケーでも同様の現象が見られたのですが、PCでも代々悪い風習として受け継がれたためです。
本題ではないので簡単にしか解説しませんが、国内のPCベンダーとソフトウェアハウスの思惑が一致した結果、過度に自社規格を採用、お仕着せスペックで山盛りのプリインストールアプリを入れ「お客様はこの仕様で使ってください。」となったため、なぜかWindows上でWindows用ソフトウェアが動かなくなる、Windowsのアップグレード不可という謎仕様になったPCもありました。
これによりもともとはIBM PC/AT互換(DOS/V)機として世界標準のはずなのに世界標準から外れるという何とも本末転倒な事象が発生しました。また、残念なことに各社の性能競争のため外観デザインにおいては二の次となり、結果として余程の初心者でもない限りカスタマイズされたパソコンは購入されなくなり、国内メーカーの衰退が始まったのです。

筆者も当時、会社から支給された謎仕様の2kg超えノートパソコンを与えられ最初にしたことは「プリインストールソフトをごっそり削除、Windowsの再構築」でした。時代はXP全盛でApple社がユニボディ(アルミボディ)のMacbookを発表したのもこの頃だったと記憶しています。

そんな国内メーカー製PC冬の時代は長らく続き、やがて国内メーカーのPC事業は衰退していきました。
渦中には当時SONYのブランドだったVAIOも含まれ、一時はスタイリッシュPCの代表格とも言われたSONYのVAIOでしたが、結局は業績不振を理由にスマホ事業を含めVAIOブランドごと切り捨てたのは記憶にも新しいことでしょう。

それから数年。

各社が苦戦する中、VAIOが独自の進化を遂げて見事復活を遂げたのです。

個人向けはもちろん、法人モデルにも注力し、ビジネスシーンでのスタイリッシュなWindowsPCを登場させました。

今回はそのVAIO製PCをお借りしたので、いいところ悪いところ全部まとめてレビューしていきます。

【ファーストインプレッション】

●外観

また最近のPCとしては珍しく天板部分の大きなロゴが目立ち、ややトレンドから外れた印象もあります。
シルバー系の多い昨今のモバイルPCですが、本機はブラック系なので落ち着いた印象があります。
開いた状態では天面とはガラリと印象を変えヘアライン処理された質感に。筆者の経験上、この手の処理は指紋が目立たない代わりに皮脂が残りやすいのではないかと懸念も。
数時間ならともかく、実際に1日中使っていると皮脂付着で全体的にあまりきれいとは言い難い状況に。きれい好きな方はクロス必須ですね。

●質感とインプレッション

天板の見た目はマットで触り心地はしっとりとした質感。まるでThinkPADを彷彿とさせます。
重さ的には標準的な13.3インチモバイルとしてはやや軽め。13.3インチにもかかわらず11インチ級の重さは立派としか言えませんね。
ただ、カタログによると「軽い=合成を犠牲」というわけではなく高剛性のヘキサシェルボディで堅牢性を確保しているのはさすがです。

●インターフェース

基本的に背面ではなく左右に振り分けられたポート類。
この薄さでHDMI/VGA/有線LAN(RJ-45)を実装しているのは立派。
ただ、やや右側面に偏りがあるのが気になるところ。
外出先でのプレゼン、オフィスでの外部モニタ接続、有線LANも全て右側にあるせいでマウスの操作と干渉することに。ユーザビリティーを取るか設計を取るか悩ましいと思うが次のモデルでは左側または背面に配置して欲しいと強く願うばかりです。

USBに関してはUSB3.0×3ポート。残念ながらUSB-Cは搭載が見送られている。
2018年現在はUSB-C電源供給が当たり前になりつつあるので電源供給にACを利用しているのが惜しいですね。

背面にはSIMスロット(Micro SIM)のみのシンプルな構成。蓋を閉めてしまえば目立つこともないのですっきりした印象に。

●機能性能

まず、今回のデモ機では次のような構成となっています。

仕様概略 (デモ実施製品型番:VJPG111GAL2B)
OS:Windows10 Pro x64
CPU:Intel Core i5-7200U
メモリ:8GB
ストレージ:SSD 256GB
液晶:FHD(1920x1080)16:9 非光沢液晶

○CPU

本機ではノートで積極的に採用されている低電圧版のUモデル Core i5 7200Uを採用。
intel製CPUは第8世代で大きく飛躍したため、第7世代Core i5は2コア4スレッドなのでややぼやけた印象もあります。
ただ、現在主流の第8世代Core i5 8250Uが1.6GHz駆動なのに対して Core i5 7200Uは2.5GHz。
コア数(スレッド数)を取るかクロック周波数を取るか利用するアプリケーションによって判断の分かれるところかもしません。

○液晶画面

13.3型の非光沢液晶を採用しています。解像度は1920×1080。FHDなので広々とした印象がありますが13.3型なのでWindows上で125%や150%表示にした方が使いやすいかもしれません。
非光沢ということもあり蛍光灯の反射は抑えられており、ギラギラとした反射で不愉快な思いをすることはありません。

○キーボード

パソコンのサイズは画面サイズに依存するため、それに伴いキーボードもやや余裕のある仕様になっています。余裕があるからと言って強引にテンキーを採用せず、キーとキーの間に余裕を持たせたのは英断とも言えるでしょう。
また、キーボードは液晶ヒンジ部分により本体奥部が持ち上げられ傾斜がつき入力しやすいポジションとなります。静かな打鍵音と共にタイピング重視のユーザーには嬉しい機能です。

○タッチパッド

もともとWindowsのタッチパッドは誤作動が多くあまり評判がよくありませんでした。
指での操作時に手のひらが触れてしまい思わぬ挙動が多発したためです。
本機に搭載のタッチパッドはパームリダクション機能付きで誤作動を防いでくれます。
また、最近はボタン無しのタッチパッドが流行っていますが本機は2ボタン式を採用し、
ボタン採用により確実なクリックが可能になり作業効率向上につながっています。

○セキュリティー

登録済みの指を置くだけでログインできる指紋認証機能を搭載しています。
モバイルPCでは外出先でのショルダーハッキングなどでパスワード漏洩の危険性がありますが、指紋認証ログインでセキュリティーを担保できるのはいいですね。

○メモリ

搭載メモリは8GB。オフィスユースでは合格点。BTOモデルでは16GBの選択肢があるものの、導入コストを考えると8GBは必要にして十分な容量と言えます。
いずれにせよ本機はCPUが2コアなのでクリエイティブな作業はもともと苦手ですし、ワード・エクセル・パワーポイントなどのオフィスユースで敢えて16GBにする必要は無いように思います。
とは言え例えばフォトショップでのフォトレタッチレベルであれば8GBでも問題なく作業可能です。

○OS

もはや当然ともいえるWindows10 Pro(x64)を採用。セキュリティー条件に厳しいビジネス用途にマッチしています。

○ストレージ

パソコンが起動ディスクにHDDを採用しなくなって久しいですが、本機もその例に漏れずSSD 256GB搭載となっています。ただ、残念なのは同じSSDでも超高速モデルではなく一般的なタイプのSSDであること。とは言え高速であることは間違いなくベンチマークさえ計測しなければ体感的にその違いはわかりません。

○バッテリー

バッテリーは底面を見ればわかるとおり取り外し不可となっています。
稼働可能時間は公称で12時間前後。実働環境で7割強としても9時間程度は持つので朝9時時点で充電量100%からバッテリーのみで利用しても終業定時までは十分に間に合うものとなっているようです。

○通信機能

IEEE802.11a/b/g/n/ac WiFi機能は当然ながら、この薄さでRJ45有線LANコネクタも採用しています。
WiFi環境が無いが有線LANが来ているビジネスホテルで重宝するのは間違いありません。
その他、大きな特徴としてSIMスロット(Micro SIM)を搭載しています。これによりモバイルルータ無しでのモバイル運用が可能となります。
3大キャリアだけでなくMVNOにも対応しています。

●レビュー総評

第8世代4コアCPU搭載が当たり前となった2018年後半にi5とは言え前世代の2コアのCPUがどのような影響を与えるのでしょうか。
ワードやエクセルなどライトな使い方であれば気づかないレベルでもクリエイティブな作業やヘビーユースするなら選択を考えてしまう状況になるかもしれません。

ただ、ビジネスシーンではスペックよりも快適性、作業効率などがより重要なので、キーピッチ、タッチパッドの誤作動防止機能など最新スペックとトレードオフで
ビジネスユーザーが使いやすいモデルとなっているように思いました。
何よりVAIOでLTE通信機能搭載。往年のVAIO(SONY時代)を知る筆者としては嬉しい限りです。

サポート面においても法人モデルなので3年保証になっており万一の場合も大きな支障をきたすこともありません。
国内メーカーということもあり安心です。

紹介の機種は下記にてレンタルでご利用いただけます。

written by ジーン・タイラー © 2018
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